毎年9月に新学年が始まる台湾大学ですが、外国人学生の入学申請は例年だとその年の3月上旬が出願締め切りでした。ところが2020年度の入学分からは11月末が締め切り、1月上旬には合格発表されるというスケジュールの前倒しが起こっています。
私がこのことを知ったのは2019年6月末ごろ、Twitterを巡回していた時のことでした。あるTweetによると、2020年度(109學年度)の申請期間が大幅に早まったと言うのです。それを見てすぐに台灣大學國際事務處のサイトを確認しました。
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2020/2021 申請資訊-國際學位生 |
台湾大学の國際學生2020年入学申請のスケジュール、今年の8月から申請が始まって11月29日締め切り、2020年1月8日に合格発表(奨学金の結果)含むって、他の大学もこれに合わせるのか、台湾大学だけ良さそうな学生を先にとってしまいたいのか…https://t.co/EgTVCHOJcd pic.twitter.com/I3wz5fmXhr— amikawa (@amikawa125) June 21, 2019
なぜ台湾大学は来年度から突然スケジュールを早め、1月8日には合格発表を行うことにしたのか?ニュースサイトを巡っていたら状況がわかってきました。
なぜ入学申請スケジュールが早まったのか
今回の入学スケジュールが早まったのは管中閔氏が新しく台湾大学の校長に就任したことによる改革、という見方ができるかもしれません。
この報道によると、今年度から台湾大学は外国人の修士・博士課程の奨学金を20%増枠、入学申請と合格発表の期間を早める、来年度(108學年 2019年9月からの学期)からは國際生助學金の枠を50%増やすなどの政策を取り、優秀な外国人学生を増やし、大学の国際化を進めようとしているようです。
加碼搶國際生 管中閔:台大不再當「老大」大學 | 大學研究所 | 文教 | 聯合新聞網— amikawa (@amikawa125) July 2, 2019
なるほど、来年度の台湾大学の入学申請期間が早まったのは、優秀な外国人学生を囲い込みたいからっぽい。奨学金の人数も増やしたよう https://t.co/tPAj9UY8Xh
これまでの研究でも、外国人が台湾の大学に入学する要因の一つに奨学金があることがわかっているので、奨学金の枠を増やすのは合理的で、外国人の立場からするとありがたいお話です。
大学側は獲りこぼしを無くしたい:入学の錄取→報到のステップ
より具体的に「なぜ台湾大学は入学申請のスケジュールを早めたのか」と見て行くと、今度は”外国人が入学申請をしてから、実際に入学してくれるか”という話になります。
周家蓓表示,過去幾年來,每年申請台大的國際生大約650人,錄取率約50%多一點,但最後報到率約69%,換言之,不到七成的人會到校就讀,實在有些可惜。
先ほどの報道によると、大学が外国人学生に合格「錄取」を出しても、実際に入学する「報到」の割合は例年69%程度だそうです。そのため、大学側は見込んでいた学生の7割程度しか獲れていないことになります。
元々130名程度にオファーしていた新入生奨学金も実際には入学してくる人数の関係で100名程度にしか与えられていないそう(もったいない)。
話は少しそれますが上の引用を見ると、毎年650名ほどの外国人学生が台湾大学に申請しており、合格するのはそのうち50%だそうです。台湾大学の倍率を初めて見ましたね…。(人気学科かそうでないかで倍率も変わりそうですが)
大学側は実際に入学「報到」してくれる外国人学生の割合を増やすべく、今回の入学申請に関わるスケジュールを前倒しすることにしました。
これまでも台湾大学の一部の学科では「提前審查」として、早めに申請して、早めに合否結果が出る制度がありましたが、2020年度入学分からは全ての学科で入学申請のスケジュールが早まります。
通常学生たちは入学申請する際には一校のいち学科だけでなく、様々な大学・学科に併願します。中には台湾大学は複数の選択のうちの一つで、他の国の大学にも出願する学生もいることでしょう。もし優秀な学生が他国のもっと良い大学に合格したら、そっちに行ってしまう可能性がある、台湾大学のオファーを待たずにそっちへ行くことを阻止するため、または台湾大学を”キープ”にされるのを防ぐために、今度からは「早めに入学の意思表示をさせる」という思惑がありそうです。
急に入学スケジュールを前倒しされた学生の立場は…
大学の思惑はだいたい掴めてきましたが、困るのは2020年度の入学を目指していた学生たちです。急に3ヶ月もスケジュールが早まると、学習計画書や推薦状の準備だけでなく、中国語能力証明の獲得(スコアメイク)も思いっきり影響を受けます。
前回の記事で大学入学前に1年間の中国語学習をすれば授業についていけるかについて書きました。授業についていけるかだけでなく、入学申請に間に合うスコアメイクが必要だよという話をしています。
前回の記事
▶︎一年間中国語を学習すれば台湾の大学の授業についていけるのか?
例年の入学申請スケジュールに合わせて中国語学習を始めていた場合、3ヶ月も前倒しされると希望の学科が要求する目標のレベルに達することが難しいのでは、という懸念があります。
2019年7月9日現在、すでに2020年度入学申請の学科ごとの募集要項が発表されています。中国語レベルの規定は学科によって様々で、中国語能力証明が不要の学科もあれば、 CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)でB1~B2レベルの中国語証明が必要な学科もあります。
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109 學年度 ( 2020/2021 ) 系所申請規定及招生名額一覽表 |
幸い中国語レベルの証明は、一年の実施回数の少ない台湾の中国語試験「華語文能力測驗」のスコアに限定されていません。ヨーロッパ共通の規格 CEFR を参照するので、同等レベルのHSKのスコアも使えるようです。
台湾大学の中文主要檢測對照參考表はこちら
2020年度の入学を目指している人は、とりあえず11月29日の申請締め切りに結果が間に合う中国語の試験を受けておきましょう。
スコアメイクが間に合わなくても諦めるのは早い
今回の台湾大学の政策を受けて、突然の改革に驚いたと同時に、ちょうどこの年に入学申請をする学生が心配になりました。いつもお世話になっている台湾大学の語文中心の先生に、今回から大学の入学申請が早まったことを知っていたかと尋ねたら、台湾大学はかねてよりこのような政策を考えていたということを教えてもらえました。ただ、2020年度入学分から実施されるのには先生も「突然といえば、突然だね」という意見でした。
またその先生曰く、「中国語のスコアが足りなくてもとりあえず希望の学科に出願してみること。他に秀でた部分があれば加点になるし、勇気を持って試す人にはチャンスがあるはず」とのアドバイスをいただきました。
全てのスケジュールを前倒しにしないといけないので大変かと思いますが、自力で入学申請をしようと考えている人は積極的に國際事務處や志望学科のオフィスに質問をしに行くことをおすすめします。
参考記事:
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