2016/10/14

26単位履修していた四年の後期の振り返り


台湾大学 行政大楼
既に修士の一学期目が始まっていますが、自分用の記録として大学四年後期に履修していたクラスの紹介、振り返りを書いていこうと思います。



四年の後期に履修していたのは以下のクラスです。


  • 台灣考古學 
  • 土耳其文一下 
  • 中國少數民族誌 
  • 東亞陶瓷文化史 
  • 資訊結構與網站設計 
  • 佛教藝術在南、中、東南亞 
  • 展示台灣:從博物館看台灣文史 
  • 服務學習三
  • 文化資產保存的理論與實踐
  • 深造規劃英文寫作


計10クラス、26単位でした。





台灣考古學 

3単位/選択制必修

台湾の考古学の講義です。

人類学系の必修で、中国考古学か台湾考古学のどちらかを履修することになっています。私は既に中国考古学を履修していたのですが、この単位は選修として計上できました。

内容は台湾での考古学研究の発展の歴史、学期の後半は台湾各地の遺跡や考古学文化の内容、理論(オーストロネシア語族の拡散など)現在の課題(緊急発掘や現代社会との関係)などのレクチャーを受けました。

台湾に於ける考古学研究は日本統治時代に始まったため、当書の研究成果を日本語のまま読むことができます。大学の図書館の五階の書庫には当時の研究者の書籍が多数所蔵されています。

指定閲読などがなかったので、講義の内容だけでは物足りない感じでした。本当に興味があったら自分で論文を探したり、実際に考古学遺跡や博物館へ出向いたらいろいろ学べたかもしれません。

修士課程ではより深く台湾考古学と、それを取り巻く社会について研究する予定なので、これからも学習を続けていくつもりです。


台湾北部の十三行博物館へ行ったときの動画です

土耳其文一下 

3単位/一般選修

トルコ語(1・下)では、前学期に引き続き、教科書「Gökkuşağı Türkçe」の続きを学びました。文法は日本語と語順が似ているので学びやすいのですが、単語は英語に似ている外来語以外はがんばらないと覚えられませんでしたw

民105年度はトルコ語(2)の開講予定はないので、ひとまずトルコ語学習は一旦休止です…。


中國少數民族誌 

3単位/選択制必修

人類学系の必修の民族誌のクラスです。東南アジア民族誌、漢人社会文化研究、台湾オーストロネシア民族誌(台湾原住民族)、太平洋民族誌、中国少数民族誌の5つの民族誌のクラスから一つを選んで履修します。

私は台湾大学入学前に中国の雲南省を訪れたことがきっかけで、文化や少数民族に興味を持ち始めました。それで人類学系を選んだので、入学前からこの必修クラスを楽しみにしていました。

授業は教授のレクチャーは少しで、主に学生のディスカッション中心でした。3人一組のグループに分かれ、担当の週には指定の文献について、質問側と回答側に分かれてディスカッションをします。

教授の専門が主に中国の西南、特に西雙版納(シーサンパンナ)の傣族(タイ族)なので、文献は雲南省の民族に関するものが多かったのと、彼らの物質文化や儀式に関するものよりも、中国の政策と少数民族の関係など政治的なものが多かったです。

期末のグループレポートでは「傣族と西雙版納の観光」をテーマに選びました。少数民族の伝統文化を観光資源として消費することは、ホストとなるタイ族自身にどんな影響を与えているのか、ツーリストの期待する伝統文化と文化の真実性、ホストとゲストの不平等な関係、無形文化遺産の保存など、語るべきことがたくさんあるテーマでした。

そもそも「観光人類学」だけで一つの学問領域になるほど大きなテーマです。自分自身がバックパッカーであることもあり、旅行者と現地の人々関係についてこれからも考えていきたいです。



東亞陶瓷文化史 

3単位/通識

東アジアの陶磁器文化史の一般教養のクラスです。いままで履修してきた一般教養の中でも好奇心の満たされるクラスでした。主に漢王朝から清王朝までの中国の陶磁器と日本、韓国の陶磁器の発展やイスラム世界〜西洋との交易について学びました。

今まで何度か故宮博物院には訪れていますが、展示されている陶磁器に関しての体系的な知識がないと、なかなか楽しむことが難しいのが故宮博物院です。このクラスでは例えば唐王朝時代の有名な「唐三彩」のある水差しの形は、実はペルシャのものを模したものであるとか、唐俑には「胡人」という、シルクロードを渡ってきた西アジアっぽい風貌のものがあったり、制作には顔、腕、服装などの多様な「模具(粘度で作った外型と内型)」を組み合わせることで、さまざまなパターンの俑を作り出せたこと、元王朝の時代に登場した青花瓷(染め付け)は、もともとイスラム世界でその基がつくられ、モンゴル族の西への移動や、元に続く明、清時代には華僑を通じて東南アジアやヨーロッパへ伝わったことなど中国の陶器に関する歴史や、西洋やイスラム世界との関わりを知ることができました。

授業方法は教授のレクチャーのほか、グループワークの比重も高く、積極的な参加が求められました。

グループでは、担当の週の授業の前に指定文献を読み小テストの作成(學習單)、クラスディスカッションの進行をしたり、期末プロジェクトもありました。プロジェクトは自分たちが担当したテーマと、現代をつなげたものの制作(形式不問)でした。

私たちのグループは「唐の職人がオンラインショップを開いたら」というテーマで、通販サイトを作成しました。ほかのグループは動画を作ったり、陶器をテーマにしたカフェを考案したりと、さまざまなアイデアがありました。

やはりグループワークの比重が大きかったので、特に期末プロジェクトの前には何度もミーティングや作成をするために時間を取られました。グループワークが苦手な人には少しめんどうなクラスではあります。それを置いても、興味深い内容のクラスでした。


資訊結構與網站設計 

3単位/一般選修

修士課程で私が所属している図書情報学が開講している選択クラスです。かなり人気のあるクラスのようで、履修した学生はおそらく100人くらいいたと思います。

資訊結構というのはInformation Architecture、主に情報の分類や組織などのことで、網站設計はウェブサイトデザインのことです。

サイトのデザインというのは、見た目の美しさだけでなく、使用者に考えさせなくてもいい(Don't make me think)ような使いやすさ、合理的なページの分類・配置が重要だということを学ぶクラスです。

教授は明るい台湾のおばちゃんという感じの気さくな方で、台湾の政府のサイトやショッピングサイトのデザインを批判しまくってましたw

期末プロジェクトではグループで実際にウェブサイトを作成しました。(というかWordpressのテンプレートをいじる程度でしたが)

同じ文学院の学科なのに、雰囲気がだいぶ人類学系と違い、「現代の生活に密接したことを学んでいるなあ」という感想を覚えましたw 今、修士課程で図書情報学系にいますが、私はやっぱり考古学や文化遺産の話の方が好きだなぁ…と思ってます。情報科学は今後の研究の為に必要なので、うまく利用するつもりで臨んでいます。



佛教藝術在南、中、東南亞 

3単位/一般選修

美術史研究所の開講する選択クラスです。仏教美術に関するクラスなのですが、中国を含まない南〜中央〜東南アジアにフォーカスを当てて、仏教の発展、Mahayana(大乗仏教)、Vajrayana(密教・チベット仏教)、Theravada(上座部仏教)それぞれの宗派の特徴や、各地域での変化などについて、実際の建築や像をもとに学びました。

仏教ではもともと仏陀を人の形で描くことはなかったのが、ガンダーラ(パキスタンの都市)を通して西洋の芸術と出会い、仏像が作られ始めます。またヒンドゥー教と仏教の関わり—例えばヒンドゥー教からすると、仏陀はヴィシュヌの9番目の化身と考えられていることや、ブラフマーはヒンドゥー教でも重要な神ですが、仏教の中でも仏陀を助けたり、悟りを皆に伝えるように説得しています。またチベット仏教とヒンドゥー教の神には、顔や腕がたくさんある姿で描かれているという共通点も見られます。そのほかラダックの寺院装飾に使われている青色の染料が、アフガニスタン産のラピスラズリであるらしく、過去の交易の痕跡が見られるという話も興味深かったです。

このクラスを受けた後、夏休みにタイの国立博物館やほかの地域の博物館や遺跡を見てまわりました。

タイ国立博物館

タイ ナコーン・パトムのWat Phra Prathon Chedi(仏教国Dvaravatiの都市

世界遺産アユタヤ

ロッブリースタイルの仏像
先ほどの故宮博物院の話と重なりますが、博物館や遺跡を楽しむには背景知識が必要だと感じます。東南アジア考古学や仏教美術のクラスで、基本的な歴史や特徴について学んでから現地へ行くと、仏像を見たときに「これはグプタスタイルだな」とか、「この装飾はAvalokiteśvara(観音菩薩)かと思ったらヴィシュヌだった!」などという楽しみ方ができました。


展示台灣:從博物館看台灣文史 

3単位/通識

その名の通り、台湾の博物館の展示や成り立ちから、台湾がどのような歴史を歩んできたかを学ぶクラスです。

授業は教授のレクチャー、博物館参観、クラスディスカッションがあり、期末にはグループプロジェクトがありました。

クラスを通して台湾大学の博物館群国立台湾博物館台北市立美術館二二八國家紀念館/を参観しました。台湾大学の校史館や人類学博物館、そして国立台湾博物館では、日本統治時代の歴史を、市立美術館では楊茂林特別展が行われており、オランダや鄭成功の時代を描いた絵画や、現代の台湾を表す立体作品を鑑賞しました。二二八国家紀年館は1947年に起きた228事件の新聞記事や被害に遭った人物の写真などを展示すると同時にアーカイブもしている施設です。館内の端末ではデータベースの公開もしており、事件の研究中心としての機能も備えています。

実際の博物館参観のほか、英語で書かれた論文も毎週読みました。故宮博物院の文物が中国から台湾へ運ばれた過程や、台湾の嘉義にオープンした故宮南院で起こった台湾アイデンティティを巡る事件(下記のリンク参照)などのディスカッションを行いました。

不爽統戰?成龍捐獻故宮南院十二生肖獸首 今遭民眾噴漆

期末プロジェクトは五人グループで、オリジナルの博物館の企画(もしくは台湾の博物館と他の国の博物館の比較)をするものでした。私たちのグループは台湾の演劇を研究している修士課程の先輩のもと、台湾演劇博物館の企画を作りました。演劇には特に思い入れはなかったのですが、脚本には作家の思想や当時の社会状況を反映するものであるし、厳戒令のさなかにも劇の中に込められた風刺など、劇にはその時代の台湾人の思いが現れているということを感じました。台湾の演劇史についてはこの本「台灣戲劇史」を参考にしました。

教授もTAも知識が豊富で、リベラルアーツ出身の人らしく物事に対する考えがとても深く、大変刺激を受けました。国立台湾博物館に関するリアクションペーパーでクラス一位になれたのが嬉しかったです。(人類学系ですし、この博物館がもともと好きなのもあって書きやすかったのです)

このクラスは台湾の歴史を博物館から見るという面白い構成で、英語で開講していることもあり、特に交換留学生におすすめです。



服務學習三 

0単位/必修

服務とはサービスのことで、主にボランティアをするクラスです。どの学科でもこのサービスラーニングを3つ取ります。人類学系では学内の人類学博物館のガイドをするものや、中高生向けのサマーキャンプを企画運営するものがあります。

私が取ったのは中高生向けのサマーキャンプの企画運営でした。本当は興味はなかったのですが、時間割の関係でこれを選ばざるを得なかったのです(博物館のガイドの方がよかった…)。

毎週一時間のミーティングと、キャンプ期間中の活動場所の確保、講演をお願いする教授との連絡、中高生の宿泊先の手配、食事の手配など、学期を通して準備を進め、夏休みの一週目にサマーキャンプが行われました。

元々は二泊三日の予定だったのですが、台風のため2日目の午後で中止が決まりました。頑張って準備をしていたメンバーたちや参加してくれた中高生のことを考えると残念でした。

おそらくどの学科でも、高校生へ学科をアピールする目的などでこのようなサマーキャンプを主催していると思います。学科の先生いわく、こういうサマーキャンプに参加しても台湾大学の入試の際に有利には全くならないならないとのことですw が、今回のキャンプで、割とたくさんの中高生が考古学に興味を持っていることがわかったので良かったです。あと、こういうのはリア充以外がやるものじゃないな…と。



文化資產保存的理論與實踐   

3単位/選修

文化遺産保存の理論と実践についてのクラスです。文化遺産の修復に関する過去の議論や、修復の哲学、ヴェニス憲章などの国際的な原則についての文献を毎週どっさり読むクラスでした。正直もっと真面目に受けておけばもっと得るものもあっただろうと思います。とにかくリーディングの量が多かった。

教授は過去にルーブル美術館で美術品の修復の仕事をされていた方で、現在は故宮博物院で修復をされています。この教授は過去にも「文化資產的材料分析」というクラスを開講していて、三年次に履修しましたが、今回の「保存の理論と実践」の方が面白かったです。(材料分析は化学の知識が必要でほとんど理解できなかったw)

文化遺産の修復に関しては「いつの状態に修復するのか」、「同じ材料、同じ技術で修復する」、「修復した箇所の見分けがつく」、「修復した箇所を元にもどせる」、「干渉を細小にする」などの原則があること、世界遺産は始めは有形のものを指していたが、近年ではその物質をとりまく人とものの相互関係を重視しているため、すべての有形文化遺産にも無形の要素があること、現代人が過去の遺産に手を加えることは許されるか、開発と文化遺産の保存など、興味深い話がたくさん出てきました。

授業はグループでの導讀(指定文献の内容をパワーポイントにまとめて発表)、三週間に1回のリアクションペーパー、期末レポートでした。期末レポートは4人グループで、無形文化遺産に登録された「和食の真実性と保存、生活における体現」のようなテーマで書きました。ほかのグループのテーマも興味深く、台北駅ちかくにある日本統治時代の三井物産のレンガ造りの倉庫の移転をめぐる歴史建造物と現代人の開発を巡る論争や、古跡の再利用—歴史建築物をスターバックスとして再生させた例などの発表をしていました。

台北市萬華區西園路一段306巷24、26號1-2樓

歴史建築物を再利用したスターバックス






深造規劃英文寫作  

 2単位/通識

海外の奨学金や大学院への進学を目指す際に必要な履歴書(CV)や志望動機などの書き方の戦略・ロジックの組み立て方を学ぶクラスです。先生が若くて面白いです。

英語のライティングのクラスでもあるので、ほぼ毎週自分のCVを書く宿題や、目指したい大学院のプログラムを探して説得力のある志望動機を書く宿題が出ました。宿題は個人の場合と、グループ(6人)の場合がありました。

このクラスを履修した時期には既に台湾大学の大学院の申請期間は過ぎていたので、実際には役には立っていないのですが、いずれ職探しの際には使えるかもしれません。もし海外の大学院を目指しているのであれば、遅くとも四年の前期までに履修することをおすすめします。


—————

大学生活最後の学期、四年後期のふりかえりでした。

グループワークがたくさんあったので、毎週のようにミーティングがあったのが大変でした。また最後の学期で10クラス、26単位分も履修するというのも、周りにはいませんでした。同級生は1つ(3単位)か、多くても3つ(9単位)くらいしか履修していなかったと言っていました。特に後期は進学組は入試の準備の方が大変でしょうからね…。

四年間8学期の学部生活で計158単位取得しました。卒業単位は128なので、30単位も関係のない単位を趣味で集めてきたようです。巧くやれば副専攻をもったり、學分學程をとるのも可能だったかと思うと、最初のうちにもっと計画的にやっておけばよかったかなぁという思いもありますが、好きなものを好きなように学ぶことができたと思います。それに台湾大学の場合、履修単位に関わらず学費は一定なので、たくさん履修した方が得だと考えていたのです…。大学生活をどう過ごすかは各人次第ですが、私はそんな考えで過ごしました。




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